得体の知れないものに絶頂まで導かれてしまったありさ。
恐怖感の中で体験した不思議な快感。
感覚は痺れたままでまだ頭がぼんやりとしている。
まもなく冷たい肉棒は引き抜かれた。
少し遅れて白濁色の液体がトロリと便器に零れ落ちた。
(ドンドンドン!)
「ありさ!どうしたの!何かあったの!?返事をしてよ!ありさ~~~!!」
扉が壊れるのではと思うほど激しくドアを叩く美枝の声に、ありさはふと我に返った。
ぼやけていた頭が次第に鮮明さを取り戻す。
(み、美枝?私・・・何をしてるんだろう・・・?)
ありさの心に突然恐怖感が蘇った。
恐怖感はありさを無意識のうちに立ち上がらせようとしていた。
その頃不思議なことに、先程まであった『手』と『氷の肉棒』の感触が消えてしまっていた。
ありさはスクッと立ち上がった。
そしてドアのノブに手を掛けた。
「あっ?私、動けるようになっている・・・?それに何だか声も出るみたい!」
(ドンドンドン!)
ありさはカチャリと鍵を解きドアを開いた。
そこには今にも泣き出しそうな表情の美枝の姿があった。
「美枝・・・あ、あれ・・・あ、あれが出たのよ・・・」
ありさは唇を震わせ美枝に何かを訴え掛けようとしたがうまく言葉にならない。
しかし美枝はありさの態度から観て、トイレの中でありさの身に大変なことが起こったと判った。
「ありさ!出たのね?例の手が出たのね!?」
「そ、そうなの。あの噂は・・・嘘じゃなかった・・・あああ~!美枝、恐かった~~~!」
ありさは美枝にしがみ付いてワンワンと泣きじゃくった。
「詳しい説明は後でいいわ!とにかくこんな気味の悪いところから早く出ましょ?」
*****
ありさは帰り道、トイレの中で起こった一部始終を包み隠さず美枝に語った。
話を聞いているうちに美枝の顔も真っ青になりついに絶句してしまった。
「美枝・・・私、恐い・・・あの男の子の霊が乗り移ったんじゃないかと・・・」
「まさかとは思うけど、絶対大丈夫って言えないわね」
「どうしたらいい?それにさ、私の中であの男の子発射したのよ。赤ちゃんが出来てたらどうしよう・・・幽霊との間の赤ちゃんなんて・・・そんなの、そんなの絶対に嫌よ!」
「ありさ、取り乱しちゃダメよ!落ちつくのよ!」
「うんうん・・・そうする・・・」
「じゃあ、こうしようか。まさかとは思うけど念のため明日お医者さんに行こ?それからさ、私のお母さんの知合いに結構有名な祈祷師がいるので行ってみよ?」
「うん、美枝、ありがとう。そうするよ」
*****
翌日、ありさは美枝に付き添われて隣町の産婦人科医を訪れていた。
わざわざ隣町の医者を選んだのは、近所の目を憚(はばか)ってのことだった。
医者は女医と言うこともあって、ありさに少しの安堵感はあった。
-続く-